ハイヤーセルフを選ぶとは
Author山本 美穂子
- 公開日 2023年5月7日 23時24分
- 更新日 2023年5月8日 17時05分
生前、耳がどんどん遠くなっていた父が
テレビのボリュームをあまりに大きくしていたので
耳の聞こえにくいお年寄りのためのスピーカーを買い、
実家のテレビと繋ぐ作業をしていた時のことです。
少しボケが入ってきていたこともあり、
私と息子が何をしているのかわからず不安になった父は、
「どういうことだ!人の家で勝手に!
勝手にそんなもの持ち込むな!」と
いきなり怒鳴り始めました。
「テレビの音がよく聞こえるようにしているんだよ」と
言っても、一向に伝わりません。
私はなんとか冷静に父と話をしようと説明を続けました。
そのとき、父に説明をしている私を見ていた息子がこう言いました。
「お母さんの目が怖い」。
その瞬間、気づいたんです。
私はちゃんと話をしようとしているだけだと思っていたけれど、
私は、子どもの頃からこの目、
父のことが嫌いで憎んでいる目をしてこの人と向かい合ってきたのだと。
これが、父と私の関係性であったと。
私はその場をすっと離れました。
すると息子が父にうまく合わせていったので父の機嫌もそのうち直り
無事にスピーカーとテレビを繋げることができたのですが、
私と父との関係性は、息子と父(彼にとっては祖父)
のようなものにはもうならないのだな、
ということも感じ、悲しく思いました。
*****
このエピソードの中で「ハイヤーセルフを選んだ」場面はどこだと思いますか?
一つは、私がその場をすっと離れた場面。
もう一つは、息子が私に「お母さんの目が怖い」と正直に言った場面です。
父の態度にショックを受けてその場から離れたのではありません。
自分がそこまで人を憎んでいて嫌いで
今にも相手を殺しそうな目をするということが、
私は悲しかったのです。
だから、自分の幸せに対する責任の取り方として
そういう人とは極力今は関わりの時間を持たず
一緒にいて楽しくなったり、
楽な気持ちで会話が弾む関係性を大事にして
創っていこうと決意しました。
また、その場から離れることで、
子どもの頃からお馴染みのディフェンスである
「自分を戦いの場に置き続ける」ことを止めることができました。
うまくいかない関係性をうまくいかせようと
努力するのがハイヤーセルフである場合もあれば、
そこから離れようとするのが
ハイヤーセルフを選ぶことである場合もある。
私はそれまでずっと、父との関係を変えたいと散々努力してきました。
でも、その結果がこれです。
この結果を受け入れた私は、ようやく
好きな人は好きと思っていいし
嫌いな人は嫌いと思っていい許可を
自分に与えることができました。
これもまた、ハイヤーセルフの選択です。
これまではずっと、なんとか好きになろう、
仲良くなろうと一生懸命自分を差し出し続けてきました。
でも、それが間違っていたことに気づいたのです。
もちろん、これがすべての人に当てはまるわけではありません。
でも、関係性を修復するためには、一方通行ではダメなのです。
お互いにその気持ちがないとダメなのです。
そして、大事なのはディフェンスを「しない」ことではなく、
自分がディフェンスをしていることに「気がつき続ける」ことなのです。